盗品美術館、ただいま建造中。

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photo credit: ssh via photopin cc

「盗みなさい、こっそりね。ただし一枚だけ…」
東京都写真美術館へ行って来ました。
展示は「機械の目 カメラとレンズ」、「繰上和美 時のポートレイト」の2本。
写真の技法と表現、を切り口に、人間の眼とは「似て非なる」視点をあぶりだす展示。広告表現の新たな境地を開いたともいわれる繰上和美の、今なお新しい作品の数々。


(走るの禁止)

「ひゃっほーい」と楽しそうに廊下をタッタカ走る娘(4)と息子(7)を
お得意の三白眼と、目玉爆弾で牽制しつつ、朝一の美術館をゆく。
「しっ、あんた走るんじゃない!静かにぃぃ・・・」
しかし、展示室に入ると、
そこは作品の持つ力のなせる業
子ども達は三人とも、展示された作品を順にまじまじと見ていく。
学生時代の恩師のひとりが、
「ワタクシは、世界中の美術館の好きな絵を、勝手に盗んだ盗品美術館を、脳内に持っているのでございます」
とおっしゃったのを、
何とまあ便利な!と、採用させていただいて、
ひそかに「元祖クラウド」と呼んでおります。
子どもらにも、
「作品を買ってやる金はないが、一枚だけ盗むのを許可するんで、一枚選んで頭ん中にもって帰るよーに」
と、盗品美術館建造を許可している。

(選ぶから残る)
「好きな一枚を選ぶ」というお題があることで、
がぜん、子どもらは張り切るわけで、
勝手に集中して展示を眺め出す。
おかげで、こちらも自分が観たい作品の前に立ち止まる余裕が出来る。
3猿育児から生まれる、一粒で二度美味しい苦肉の策。
娘(8)は、人間関係にまつわる物語を感じられるようなモノクロの人物写真を、
娘(4)は、色鮮やかなの花の写真を、
息子(7)は、真っ青な背景に泳ぐ精子の写真を、選んだ。

(美の力)
生き物大好きな息子、
「ぼく、これにした、このおたまじゃくしの写真~!」
と言うので、
「おぉ、いいね~確かに美しい。でも、これおたまじゃくしじゃないよ、精子だよ。
大人になったら、ちんちんから、でてくんだよね~。
あなたも、半分これで出来てんの。きれいだね~」
と言ったら、
「ハッ」
と言って、固まった息子は、もう一度、その美しい写真を見ながら、
「やっぱりこっちにする」、と隣のナポレオンフィッシュの写真を指差した。
でも、母には君の頭の中の盗品美術館に、収蔵された作品がナポレオンフィッシュじゃないことがわかったよ。
学校でのエロ話やら、どこかのエロ本の中で出会う前に、
美しい、生命の神秘さえ感じさせる精子の写真に出会って、それを自ら選んだ、っていうのは
とてもラッキーなんじゃない?
まぁ、横にいる、うるさいお母ちゃん学芸員が邪魔だがな(笑)
と思いながら、二枚の写真を比べるように見ていた息子の背中を見ていた。
いつか、
うるさいお母ちゃん学芸員が横にいない時、
自分だけの盗品美術館で、
じっくり見たらいいさ。
元祖クラウド、容量無制限。
息子よ、勝手に雲の上をあそべ。