凡人コンプレックス

小さい時から「凡人コンプレックス」があった。

小学校の新品の本だらけの図書館で沢山の伝記を読み倒した。

偉人たちの子供時代と比べて「あーあー、私は何の取り柄もない凡人だなー」と図書室の机に突っ伏した。

才能のある人が羨ましかった。

高校生になって

TVで本木雅弘さんが「自分は、ずっと凡人コンプレックスがある」というのを聞いて軽い衝撃を受けた。

こんなに才能に溢れた人が自分を凡人と思うのか、と。

大学時代の友人たちは、よく「あー、才能が欲しい」とつぶやいていた。

学食で伸びたラーメンを啜りながら

「でも、望んだ才能じゃなくて、突然フレスコ画を描く才能を授かっちゃったら、どうするよ?学食をシスティーナ礼拝堂にしちゃう?」

などとくだらぬ妄想話に盛り上がったりもした。

とりあえず、どんな才能でも欲しかった。

その後「天才」と言われる人たちや天才の家族との交流がいくつかあり、天才もその周辺の人も色々と大変なのだと知ってからは、簡単に羨ましいと思わなくなっていった。

凡人だから、のんきに日々を送れているのだと思うようになり、母親になると平凡に過ぎる日々に感謝を感じるようになった。

今、長女(中2)や長男(中1)が先生や先輩、同級生の多様なジャンルの才能に触れて、自分の平凡さを嘆き、もがいている。

かつて何者かになりたいと思っていた自分は、何者でもないまま、それを眺めている。