壊れる嫌な感じを子どもたちに伝えよう
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あなたも壊れる、私も壊れる。
形あるものも、目に見えない心も壊れる。
けれど、それは時に見えずらく、聴こえずらい。
自らが、壊れていることに気付けないことさえ、あるのだ。
今、
子どもと、周りの大人たちに必要なのは、この壊れゆくものの気配を察する力だと思う。
〈日頃眠る感覚の目覚め〉
造本作家・デザイナーの駒形克己氏による
ワークショップ・タクタイル(触覚)@AXIS BIBLIOFILE
に参加してきた。
目隠しをして、手の感覚だけを頼りに一枚の紙から、立体の造形を作り上げる。
視覚を奪われ、手の感覚と、耳から聞こえる音に自然と集中する。
普段、聞こえていても気にしていない、小さな音。
紙がこすれる音、隣の人の息づかい、椅子の足が床をひっかく音。
手の感覚だけを頼りに、一枚の紙を折ったり、切ったり。
はさみを持つ手が震える。
全ての動きが、恐る恐る。
臆病になる自分に笑える。
…というより笑うことで、何かに対する畏れを振り払おうとしている。
日頃使わない脳みその何処かが、フル回転している。
今、この瞬間に感じていることを、もれなく拾いたい、拾わなくてはという
焦りにも似た、気持ち。
普段、使われていなかった感覚が、体中のあちらこちらから芽吹いてくる。
くすぐったい感じ。
〈伝える)
目隠しを外したら、とても眩しかった。
目覚めた感覚は、まだ残っていて
一枚の紙を力強く、グシャっと握りつぶす音を聴いたら、体中のあちらこちらが小さく悲鳴をあげた。
駒形さんが、ワークショップに紙を使う理由を説明された。
「壊れる、ということがどういうことか、子どもにも伝わりやすいから」
伝えたい、という思いの強さも伝わるワークショップだった。
見えることで、見えなくなっているものがあることを、
それに気付くことの大切な意味と、感触を。
そして、それらが自分と周りの人たちを救うことを知る。
〈取り戻す〉
オフィスで、家で、無造作に紙をグシャっと握りつぶしていた自分。
壊れたことが見えにくい玩具に、一度死んでもやり直せるゲームに囲まれた子ども達。
壊れていくことに鈍くなり、壊れていく気配を察する感覚を喪くしていく生活をしていないか。
近くの学校で、幼い子が自ら命を絶ったニュースを聞き、ただ怖れおののいていた私に
子どもにも、周りの大人にも
失った感覚を取戻し、忘れたものを蘇らせる時間が必要だと
折り目の戻らない、一枚の紙がそっと教えてくれた。
そう今日から、壊れる嫌な感じを子ども達に伝えよう。