はしゃぐを悼む

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なんの集まりか、酔いの回った若者たちが
店から出て大はしゃぎしている。
ちょっと度を超えてふざけ過ぎた男の子を
真面目そうな女の子が咎めている。

「赤いビキニを彼女にもらっちゃったんですよ〜
うひひひーーいいでしょーー♪」
飲み会後のバスの車中、
大きな体をゆすりながら
大声で話しかけてきた研究室の後輩を
咎めて睨みつけたことを思い出した。

テカテカに光ったおでこ全開の私の写真に
「明けの明星 ぬまが嬢」
と油性ペンで書き研究室の入口に貼り、
皆が受けるのをみて喜んでいた彼。

皆を楽しませることが好きだった。

とても真面目で面白く賢い人だったけど、
若くて今より少しだけ潔癖だった私は、
おふざけが過ぎる彼を、ちょっと冷めた目で見ていた。

今更

彼は時々ニコニコしながら
僕は早死の家系だからね〜。親戚もみんな早く死ぬんですよ〜。
と言っていた。

色々おふざけが過ぎるよな〜と思っていたけど、
彼のお父さんは本当に若く亡くなり、
彼は地元に帰って行った。

私が長女を産んだ時、自分のお気に入りのDVDを
お祝いに贈ってくれた。
年子で息子を産んで、バタバタしているうちに誰も彼もと疎遠になり、
久しぶりに共通の友人に連絡を取ったら、彼も亡くなっていた。

おふざけが過ぎる彼の
いつもちょっとだけ、はしゃぎ過ぎていた彼の
心の中の哀しみや、やるせなさを今になって想う。

はしゃがずにはいられなかった哀しみを
悼みたいなと想う。

あぁ、今なら今だったら、
赤いビキニを
一緒に頭にかぶって街を練り歩いたっていいよ、
それで、やり場のない不安が減るのならと想う。
今更。

異様にはしゃがずにはいられない人を
見かけると、その陰に
もしも、もしも哀しみがあるのなら、
生きているうちに何処かへ飛んでいきますように、
と祈る。

校庭の片隅に
やはり異様なはしゃぎ方をする子を
見かけた時、ぎょっとした。
その奥にもしも哀しみがあるのなら
飛んでいけよ、と祈ったけど、

全てが杞憂であるように、とも祈る。