俺、まだ子どもに飽きてねーから


大学院に進んだ年の夏、同じ学科の友人達5人と遠野に行った。
ユースホステルに泊まっての地味でマニアックな伝承文学な旅。

途中、タクシーの運転手さんに
「君達何年生?」と尋ねられ、
「修士1年です」と答えた。

「そりゃーー大変だ、嫁の貰い手いなくなっちゃうから、今のうちに誰か捕まえとけよ」

という運転手さんの言葉に
「河童淵は、ほんとに河童出そうだね!」とはしゃいでいた化粧っ気ない私たちは、固まった。
そして目的地まで、みんなで押し黙ったままだった。

まだ

その後も地味にマニアック道を歩み非常勤先をハシゴしていた私に田舎の叔父が

「仕事は紹介出来ないけど、いい相手なら紹介してやるよ、仕事してないで早く結婚してお前も孫見せてやれ〜可愛いぞ〜」

と言った。

確かに周りも結婚ラッシュだった。
自分にはまだ、やることあるしな…と思いつつ、
側にいた父に
「そーだよねー、孫とか見たいっすよね〜」
とつぶやくと
父は
「あ、俺まだ子どもに飽きてねーから」
とボソッとこたえた。

その時は、あぁ早く結婚しろと急かす親じゃなくて良かった〜、くらいにしか思ってなかった。

いまさら

しかし、今になって

飽きてねーから

って、すごいな…と思う。

3人の子どもらが、
次々に色々やらかし、
あああ、もういいわ!
ママにはママの人生があるんだよおおおお!

と叫んだりもする私だけれど、
まだまだ先々味わう想いがあるのだろうね…。

小5の時には反抗開始、
父の体を駆け登って急所蹴りしていた娘が
ちゃんとした就職もせず、ちっとも結婚しようとしない時、

まだ飽きてねー

って言えるのか、
親業、奥深いっすね…。

いやいや、父の日を前にほんと感謝です。

お父さん、いつもありがとう。
一度も謝ったことなかったけど、
急所蹴りしてごめんなさい。