挨拶は子どもの命を守る?!


手渡された瞬間、昭和なポマード臭が立ち昇る黄色い帽子。町内会の長老方と使い回しの交通安全帽である。
「OH!異文化交流デスね〜」
と心でつぶやきながら、ペトペトの帽子をかぶり、交通安全の黄色いタスキをかけ、旗を持ち交差点に立つ。

交通安全週間、PTAのお仕事だ。

コスプレ感満載の交通安全のおばさんスタイルを見て、娘は
「ダッサ〜。よかった、私の通学路から離れた交差点の担当で」と喜んでいた。
ダサいことに厳しいお年頃とはいえ泣ける…。

ご挨拶

ビル風ピューピュー小雨降る中、一時間弱の旗振り当番。
近隣公立小二校、私立小の子ども達が交差点を渡っていく。
旗振りながら「おはようございます〜!いってらっしゃ〜い」と声をかける。

ペアを組むおじいちゃんは、強風に煽られてよろけながら子どもに挨拶。

全身びっしょりで冷え切ったところに、続けてやって来た私立小の男の子と女の子。

ぴょこん、と小さくお辞儀して「おはようございます!」と元気に言って通過した。
信号のこちらで挨拶、渡った先のおじいちゃんにも挨拶。

「かわゆい〜〜!」

冷え切った身体が心なしか温かくなる。

そこへ、子らと同じ公立小の男の子が、おじいちゃんの挨拶を無視し、わざわざ旗の外側を通り抜け、背中を突き飛ばして駆けていった。

正直もう帰りたい気分、全身ぐっしょり冷え切った身体にその態度は、堪えるぜよ。

たかが、されど

GMOインターネットの熊谷会長だったかな、
「礼儀正しさに勝る攻撃力はなし」
と仰っていたのは。

挨拶は、時に防御力をも増す。

ぴょこんとお辞儀して挨拶してくれた
男の子や女の子の前に
もし車が飛び出してきたら、
即、身体が動いて助けにいっちゃうなと思った。
理屈じゃなく。

でも、挨拶を無視され、
冷え切った身体を突き飛ばされた1秒後に男の子を命を呈して救えるか、自信がないよ。
わたし、人間出来てないからな。

極端な話、
挨拶が命を救うこともある、
と思うのはそういうこともある。

横断歩道を渡るとき、
小学生はトラックから死角になる。

運転手さんと目を合わせ会釈や挨拶しよう、と
学校や警察は指導している。

寝不足で働きづめの運転者さんが、
トラックを急がせているかもしれないのだ。

元気よく挨拶し、止まってくれたことへの感謝を
伝えて横断歩道を渡ることの意義が
双方にとって大きいことは、大人ならわかる。

くんれん

朝から不貞腐れて挨拶しない子たちも
別に悪い子じゃない。
ただ、挨拶を訓練されていないだけ。

単なる挨拶で、損してる。
たかが挨拶、されど挨拶。
だけど、それが命を救うかもしれないよ。

ダラダラ登校する我が子の背中に
「いってらっしゃいー!!いってきます!はー?
聞こえないー!ゴラァー
いってらっしゃいーー!!」
としつこくたたみかける。

交差点では、おじいちゃんと連携。
「おはようございます〜♪」
挨拶しない子ども達に至近距離から
笑顔でプレッシャーをかける。

3日目には、わざと車道を歩いていた子も
横断歩道を渡り、挨拶は返さないけど頷くようになる。

こうして、
「うるせぇクソババア」として
順調に育ちつつあるワタクシ。
交通安全ルックが、様になるのも時間の問題かもしれない。

ダサいけど、うるせぇけど、頭もちょっと痒いけど
しょーがないよね。
「命を守るくんれん、くんれん」
と呟いて「うるせぇクソババァ」は今日も行く〜♪