ネガティブ用語を打ち返す瞬発力

「落ちましたよ!」

背後から大きな声。

息子(12)の試験会場の出口。

朝、固い表情だったけれど

どんな顔で出てくるか、と待っていた。

ちょうどその時。

私が手袋を片方落としたことに

気づいた後ろの人が

「落ちましたよ!」と教えてくれたのだ。

その瞬間、場の空気が変わった。

皆、自分の子どもがどんな顔で出てくるか、

背伸びしながら

出口を見つめている最中だったからだ。

試験の禁句「落ちる」だからだ。

場の空気が固まったのを感じたと

ほとんど変わらないタイミングで

「あ、手袋が代わりに落ちてくれた!」

という気持ちが湧き出た。

だから

「落ちましたよ!」と

大きな声で言われて、場が凍った中

一瞬も間を置かずに

口から「ありがとうございます!」

という言葉が出た。

その瞬間、場の緊張が少しほどけた。

「落ちた」宣告(笑)された瞬間に

心に湧いた

「代わりに落ちてくれた」という想い

頭で考えるより早く口から出た

「ありがとう」という言葉。

その瞬発力に我ながら驚いた。

思えば小さい頃から

母がネガティブな言葉や思考や出来事を

光速で打ち返すのを耳にして来た。

悪夢で起きた子らに私が

「良かったね、夢で嫌なこと消化したから

現実にならないよ」と言うのも母の影響

なのだろう。

不吉とされるカラスや黒猫とも

仲良く話す母の事は

未だによく分からない。

多分魔女なのだろう。

息子が無事行きたい学校に

行くことになったことと

関係あるかどうかわからないが

ネガティブ用語やネガティブ思考を

打ち返す瞬発力

伝承したいなと思った。

私はまだ魔女見習いの身だけれどね。