セミが母に憑依した話
息子(中1)と外から帰宅したら玄関前にセミがひっくり返っていた。
これを今時は「セミファイナル」と呼ぶのか、などと思い見つめていると息子が
「セミ、可哀想だよね〜長い間、地面の中にいて数週間しか地上にいられないんだもんね」
と、優しげな感じでのたもうた。
憑依
そ、その瞬間、、母にセミが憑依して
「ミ、ミ、ミ、ミィーンミィンミィーン!
バーカ、バーカ、人間のガキはこれだからヤダミィーンね!
地面の中は冬はあったかいし、夏は涼しくて幸せだミィンねー。子孫つくるためにちょっと地上来るだけで俺たちラッキーミィンね。幸せな生き物ミィンねー。
人間こそずーっとこんな暑苦しい地上にいて、可哀想だミィーンーーー。
ミィーンミィーン」
息子は、いつもの事ながら若干引き気味に
しかし目が離せない様子で見ていた。
勝手に幸せ
人は、自分の勝手な基準で他人の幸不幸をはかりがちだ。しかも、無意識に刷り込まれた基準で他人の幸不幸をはかってしまうことも多い。
私も無意識に手元のものさしで、他人の幸不幸を判断している自分を見つけて愕然とすることがある。
この物差しは、身の回りに根深く存在している罠である。
結婚していないから、同性を好きだから、子供がいないから、学校に行っていないから、身体が不自由だからなどと勝手な物差しで「可哀想」認定して行う言動は、実は全然お門違いだったりする。悪気もなく、善意だったり無意識だったりするからやっかいだ。
幸不幸
私も小学生の時に「セミは地上で短い期間しか生きられない可哀想で健気な生き物だ」と教わったっけな。
息子の顔には
「あー、ママにセミが憑依したのが家に帰ってからで良かったな」
と書いてあった。
息子さん、どこでも色々な物が憑依しちゃうお母さん持って「可哀想」ね〜。
おっと!
いやいや、案外それが幸せかもしれませんね〜。わかりませんけど。
幸不幸は、自分で決める。
他人が決めることじゃないミィーン、
と聞こえたように思って玄関を開けたら
ひっくり返っていたセミは
もうどこかに飛んでいっていた。
明日はあなたに憑依するかもしれないね。