『やってみよう!小学校はじめてのオンライン授業』(樋口万太郎・堀田龍也編著)-前例のないことに立ち向かう力を付ける
オンライン授業、いつやるの。今でしょ?
子どもらのオンライン授業をこっそり観察した母の率直な感想。
本書の巻頭言の言葉とまったく同じ。
我が家には小6、中3、高1の子どもがいる。
3月、新型コロナウィルスの流行で、子ども達の学校も休校。
小6の通う公立小では1人1台タブレットを支給されており、早くから掲示板での健康観察やMicrosoft Teamsでの朝の会。自治体の授業動画配信があった。
中3の通う私立中は、Google Classroomで授業動画配信やZoomで朝の会、授業。
高1の通う私立高は、Google Classroomで朝の会、授業動画配信があった。
ある朝などは、小6がMicrosoft Teamsで、中3がZoomで、高1がGoogle Classroomで、それぞれの学校の朝の会に参加。
ちょっと不思議な面白い光景が繰り広げられていた。
試行錯誤
突然の休校、オンライン授業導入の過渡期。
慣れぬ機器の操作をしながら、子ども達に繋がって、安心感を与えようとしている先生方の文字通り「なりふり構わぬ」試行錯誤の姿と熱意が、どの画面からもあふれ出る日々。
休校期間中、子ども達に一番の学びとなったのは、目の前で繰り広げられる「学校や先生方の試行錯誤」だったのではないかと思う。
小6娘のタブレットの調子が悪くて、音声が繋がらなかった時には、担任が「元気かー?」「〇」「困ったことあるか~?」「×」と〇×で答えさせる様子が漏れ聞こえ、微笑ましかった。
休校中に子どもと繋がってくれている人のある安心感と有難さ。
2つのだいじ
本書でもオンライン授業の目的に「子どもとのつながり」と「子どもの学びの保障」をあげている。
私は、過去に子ども達の学校の学級崩壊を何度か経験している。
その際、学年で学ぶべき履修内容を終了できずに進級、進学し、大変苦労した子どもたちを何人も知っている。哀しみや苦い想いの残ることも。
感染症の拡大による休校。
状況は違えど、子どもたちに同じ負担が課せられることは想像に難くない。
けれど、それを防ぐ方法はある。
コツコツのコツ
第1章には、何年も前から各地の学校で取り組んだ実践の生きたアドバイスが、「オンライン授業」のコツとしてぎゅっと濃縮されている。
最初から完璧を求めず、プロのコンテンツを利用し、同期・非同期を使い分ける。
オンライン上で完結させることにこだわらず、ドリルやプリントを活用する、などなど。
子どもらの学校のオンライン授業活用が上手な先生方はもれなく、これらのポイントを押さえている。
広島県の教育長平川理恵さんが、学校再開後のICT活用を訴え「With コロナ時代のカリキュラムマネジメント」の必要性を説いている。
分散登校しながらICT活用する子どもらの学校の様子を見ているから、このメッセージの有用性と重要さがしみる。
今、個別の学びを見るミクロの視点と、学内外を俯瞰するマクロの視点をもって、ツールやコンテンツ、人をコーディネートすることが求められている。
それらを受け止める準備は、デジタルネイティブの子どもたちには既に出来ている。
待たれるのは、各地の教育委員会、教員、保護者といった大人の行動だけ。
前例のない世界で
巻末に収録の座談会では、
「これから起こることは大抵前例がないんです。前例がないことにどうやって立ち向かうかがこれからの時代の能力で、そのことがいま問われている。」(p.122)
とあるが、大賛成だ。
そして、
子どもが前例のないことに立ち向かう力をつける一番の方法は、大人が「前例のないことに立ち向かう」姿を見せることではないかとも感じている。
本書の先生方の実践例をヒントにして試行錯誤するのもよいかもしれない。
完全休校が解除できた今だから、やれることも色々ある。
数年前、1人1台タブレット導入時、ICTを理解せず大反対する保護者達に根気よく説明しつづけた教育委員会や担当者の涙ぐましい努力があって、今回子ども達の「つながり」と「学び」が保障されたことも覚えておきたい。
今、モンペアに見える保護者も、先生方に感謝しているし、協力できることはしたいと思っているかもしれない。
親は常に子育てに試行錯誤し、試行錯誤仲間を求めているのだから。
というわけで・・・
試行錯誤、いつやるの?
今でしょ。
(本書は、学陽書房の読者モニターに応募し、献本頂いた。多謝。)