子どもは、家出してらっしゃい~と送り出す
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「もう、家出してやる~」
背中のランドセルをガタガタ揺らし、玄関で娘(7)が叫んでいる。
慌ただしく朝の支度をしながら、「何~?」と聞き返しても返事は同じ。
「家出することにしたからね~」
下二人の世話に気を取られている母が気に入らなくて、よく荒れる娘。
しかし、早いな、小学校低学年から家出とはね…。
〈参考書〉
玄関へ行くと、ふくれっ面で聞く耳もたぬ様子で壁にもたれる娘。
私は、口を開くのあきらめて
「わかったから、これ参考に持って行きなさい」
と一冊の絵本を手渡した。
娘は、ふんっと言いながら脇に抱えて学校へ。
その本の名は
「フランシスのいえで」
赤ちゃんにかかりきりの両親にすねて家出するフランシスのおはなし。
家出の先は、リビングのテーブルの下。
両親は、テーブルの下のフランシスに気付かぬふりをしたまま
自分たちがいかにフランシスを大事に思っているかを語り合う。
〈ご帰還〉
帰宅した娘に
「どう?参考になった?」
と尋ねると
「ぜ~んぜん参考になんないよ。だって、家出なのに家の中なんだもん。」
と答えていたけど、自分も小さな机の下にもぐりこんで本を読んでいた。
家出しなさい、いつでもね。
でも、しばらくはママのそばに家出しにいらっしゃい。
口では言えない私の気持ち、を絵本がそっと運んでくれる。
そして、私は
机のそばで、実家の母に電話して
大きな声で、娘のことを褒め称える。